暗号技術の落とし穴

 現代の暗号技術の敵は量子コンピュータではなく人間だった。サヴァンと呼ばれているある少年は、与えられた数字を二つの数字のかけ算として表すことに関して、常人には想像もできないほどの能力を示しているという。この少年にかかれば、数千桁もあるような整数でもたちどころに二つの整数の積に分解されるそうだ。
 暗号技術とかけ算とでは一見関係ないように思えるが、実はこの少年は暗号技術の安全性を脅かす存在である。というのも、現在の主流である RSA 暗号をはじめとする多くの公開鍵暗号方式では、整数同士のかけ算自体は計算機で容易に行えるものの、反対に整数同士の積に分解する操作は桁数が大きくなると現在の計算機では不可能である、ということを前提としているためである。
 ちなみに、現在研究が進められている量子コンピュータと呼ばれる種類の計算機が実現するとこの前提は崩れるとされる。このことは研究者の間でも広く知られており、量子コンピュータに対しても安全とされる「量子暗号」と呼ばれる暗号化方式もすでに提案されている。しかし、「人間」の存在はこれまでほとんど考えられておらず、研究者たちにとって大きな盲点であった。
  (後略)
現代の暗号技術に思わぬ落とし穴―天才少年の前には無力

これは大事だ.少年もテロ集団とかに狙われそうで大変だな.