mixi の新利用規約

〔おことわり〕 私は法律等の専門家ではないので,本記事には誤った指摘が含まれている可能性があります.

今日,たまたま Yahoo! ニュースを読んで知ったのだが,mixi利用規約が変わるらしい.その新規約で,明らかに問題になりそうなのが第 18 条である.第 17 条も多少関係するので一緒に引用しておく.

! 第17条 日記等の情報に関する権利
# 本サービスを利用して日記等の情報を投稿するユーザーは、弊社に対し、当該日記等の情報が第三者の権利を侵害していないことを保証するものとします。万一、第三者との間で何らかの紛争が発生した場合には、当該ユーザーの費用と責任において問題を解決するとともに、弊社に何等の迷惑又は損害を与えないものとします。

! 第18条 日記等の情報の使用許諾等
# 本サービスを利用してユーザーが日記等の情報を投稿する場合には、ユーザーは弊社に対して、当該日記等の情報を日本の国内外において無償かつ非独占的に使用する権利(複製、上映、公衆送信、展示、頒布、翻訳、改変等を行うこと)を許諾するものとします。
# ユーザーは、弊社に対して著作者人格権を行使しないものとします。

mixi の新利用規約

ずいぶんと強気な条項である.件のニュースの記事に対して以下のようなコメントを投稿している人がいたが,利用者の観点からすれば至ってまっとうな意見であるように感じる.

お前の著作物は俺の物。

お前の著作物で生じたトラブルはお前の責任。

っておかしくねえか?

Yahoo! ニュースの記事に対するコメント

もっとも,「お前の著作物は俺の物。」という解釈には間違いがある.実際には「お前の著作物を俺が勝手に使っても文句を言うな。」ぐらいが正しい.しかし,利用者からの投稿内容が mixi によって利用されたがために,その投稿内容に関する問題点が露呈してしまったとしたら,利用者はその発生した問題について全ての責任を負わなければならないのだろうか.依然として疑問が残るところである.

この雑記は自前のサーバーで運用しているので,これらの条項の影響を直接受けることはないだろう.一応,雑記の新着情報が mixi のプロフィールに表示されるように設定してあるが,いざとなれば簡単に切り離すことができる.そして,少なくとも切り離した以降に投稿した記事に関しては,これらの条項の影響を受けることはない.

ところで,上記のような規約を設けた目的ないし背景としては,とりあえず 2 通りの可能性が考えられる.

ひとつは,一部の利用者が既に危惧しているように,投稿内容を食い物にするようなビジネスを展開するための足がかりとすることである.しかし,これが本当だとすれば,多数の利用者が反発することは目に見えている.多数の利用者が退会する,あるいは投稿を控えるなどといった行動をとるだろう.極端にいえば mixi というコミュニティが崩壊する危険性すらある.まともな企業のやることではない.

もうひとつは,現在の日本国内の著作権法には「フェアユース(公正利用)」と呼ばれる概念ないし規定がないことに対する(行きすぎた)対策である.今のところ私はこちらの可能性を有力視している.

後者に関して,多少の説明を試みることにしよう.私の頭の中でもきちんと整理されているわけではないので,わかりにくい,論理に飛躍があるなどといった部分があるかもしれないが,ご容赦いただきたい.

たとえば mixi では(運営側が提示した)ニュースなどの記事に対してトラックバックをすることが可能になっている.ここで,運営側が有用と思われる投稿が複数寄せられているところをみて,(他の利用者に便宜を図る目的で)いわゆる「まとめ記事」を作ったとしよう.このとき,投稿内容をある意味で二次利用することになるため,「俺に著作権があるものを勝手に二次利用した」と指摘される可能性がある.まあ,多くの人は「いちいちそんなことを指摘すんな」と思うことだろうと(私は)信じているが,現在の日本の著作権法では,このような利用ですらも,著作権者からの明示的ないし黙示的な許可をとりつけなければ,著作権の侵害であるとみなされる.フェアユースの概念があれば(おそらく)著作権の侵害にはあたらない.

単に「まとめ記事」を作りたいだけならば,たとえば「ニュースの記事に対するトラックバックの内容」と限定することもできるだろうが,他の投稿についても同様の利用事例が生じることはあるだろうから,前出のように全ての内容を対象にした,ということは合理的に予想できる.また,目的を達成するには「フェアユースの範囲で」と限定してもいいかもしれないが,そもそも法律にないような概念を一企業が持ち出すのは,万一訴訟が起こったときに,規約の有効性に対して司法がどう判断するかわからないわけだから,企業側にとってあまりにも危険である.そのため,最大限に防御策をとるならば「あらゆる利用」を認めるような記述にならざるを得ない.

どちらにせよ,件の条項が運営側自身の権益を守ることばかりを考えて作られたという印象はぬぐえない.ソーシャルネットワークサービスというものはことさらに利用者あってのサービスなわけだから,もう少し利用者の立場に立った規約を設けてほしいものである.